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POSTALCO POP UP
変わるもの 続いていくもの

2021年04月16日

アルテックとポスタルコ
国を越えて通じ合う
デザインへの価値観

ポスタルコ (Postalco) は、東京を拠点とし、日本の技術を毎日の暮らしに活かすものづくりを続けているブランドです。確かな品質とサスティナブルな素材と製品という、アルテックとものづくりの価値観を共有するポスタルコの Pop Up を Artek Webstore と表参道の Artek Tokyo Store にて、2021年4月26日(月)まで開催中です。ふたつのブランドのコラボレーションを記念し、4月1日(金)、アルテック社長マリアンネ・ゴーブルとポスタルコのデザイナー、マイク・エーブルソンさんのオンライントークイベントが行われました。ブランドを代表する二人の間で交わされた、デザインやブランドへの想いを記事としてまとめました。

【Artek & Postalco】 オンライントークイベント
日時:2021年4月1日(金) 19:00-20:00 実施
登壇者:
マリアンネ・ゴーブル(アルテック社長)
マイク・エーブルソン(ポスタルコ デザイナー)
モデレーター:
廣川淳哉(編集者)


マイク・エーブルソン:
マイク・エーブルソンと申します。ポスタルコの創業者のひとりです。ポスタルコは20年前にブルックリンで設立され、現在は東京を拠点として活動しています。ステーショナリー、ウェア、家具まで、ポスタルコの幅広い製品は、京橋のポスタルコショップでご覧いただけます。人間は不完全なもので、身の周りにある「もの」に支えられて生きています。ポスタルコは、人の不完全さを補い、完全に近づけていくために必要なものは何か?ということを日々考えています。

Session 1
身体とデザインについて



マリアンネ・ゴーブル:
人の身体と家具には相互のインタラクティブな対話があると感じています。アルテックの家具が生み出されて80年を超える年月の中で、人の身体や体形もまた変わっています。そのため数年前、椅子やテーブルをそれぞれ 2 cm ほど高くしました。しかし、「スツール 60」だけは変更しませんでした。脚が長くなると不格好で違和感がありますし、椅子としてだけでなくサイドテーブルなどの用途も多いため、デザイン的見地と暮らしの中での用途という見地から検討した結果です。製品開発だけでなく製品の改良や改善は終わることがなく続いていくものと考えています。

マイク・エーブルソン:
デザイナーとしては、どういう形や色にしようかという点からスタートしがちですが、まず最初に「人間は完全でも完璧でもない」という点からスタートし発展させていきます。例えば革と紐があれば、それでサンダルを作ることができます。サンダルを履けば、今まで熱くて裸足で歩けなかった場所や、岩が痛くて行けなかった場所へ行くことができます。不可能だったことが可能になる、それは素晴らしいことです。それを追求していくことがデザイナーの務めであると感じています。

マイク・エーブルソン:
身体だけでなく、心も同様です。テクノロジーの発達によりオンラインで繋がることができますし、例えば「スナップパッド」があることで頭の中の思考を言葉として書き留めることができる。ものづくりや製品のデザインとは、人が完全、完璧に近づくことを求める行為です。身体に何が足りないのか、心に何が足りないのかを追求することだと思います。

Session 2
ブランドやデザインを継承すること

マリアンネ・ゴーブル:
アルテックの家具は、長い年月の中で、工場や機械の変更、プロセスやサイズ、表面仕上げの改善を繰り返しています。色にも流行り廃りがあります。その中で、ブランドを継承していくこと。それは、1930年代、アルテック創業時のアアルトや創業者の想いを深く理解し、その想いを受け継ぐことです。同時にいつの時代も使う人の側に立ち、寄り添うことも大切だと思います。オリジナルへの敬意をもって変更や改善が行われるのであれば、それはアルヴァ・アアルトが最初に作った製品と変わらない、彼の想いや意図を現代の人々と暮らしに届けることができると考えています。

マイク・エーブルソン:
1920年代にアアルト夫妻が作った結核患者のための建築「パイミオのサナトリウム」とそのための家具がありますよね。感染症の患者の身体にやさしい自然素材を用いた工夫、それはCOVID-19の感染と拡大にさらされている現代の状況でも十分有効です。さまざまな最新技術が生み出されている現代において、100年近く前の技術とデザインが今もなお通用するということに、継承されることの素晴らしさを感じます。

マイク・エーブルソン:
ポスタルコを始める前から、なぜ去年着たジャケットが今年は流行遅れで着ることができなくなるのか?と不思議でした。今年は腕が一本増えたから去年のジャケットが着られないということではありませんよね。一方、家具においては、80年前のものでも評価や価値は変わりません。ではファッションの分野で、家具のような価値を作ることができないか?と考えました。流行にとらわれるのではなく、流行を越えた服を作りたいと思っています。

今私が着ているシャツは「フリーアームシャツ」という名前です。肩と腕の動きやすさを考慮した構造からデザインされています。ファッションはその名の通り「流行」という意味ですが、流行に左右されない、変わらない「核(コア)」の部分を持たなくてはいけないと思います。さらに環境への優しさという面でも、ひとつの服を長く着続けることは大切です。「身に着けられる家具を作りたい。」人を完全に近づけるたに、身体の外側にまず服があり、その外側に鞄があり、さらに外側に家具がある。自分自身が広がっていくというイメージかもしれません。

Session 3
「シエナ」と「スナップパッド」

マイク・エーブルソン:
スナップパッドを考案した最初の始まりは、余ってしまった紙の束でした。この紙をどうにか効率よく利用できないかと考えていた時、キャンプ場で、ベーグルの穴に棒を通して焼いている人を見て、これだ!と思いました。そこから、この穴をあけて閉じるスタイルを思いつきました。自分の思考を助ける道具、いわば "Thinking Tool" ですね。このカチカチというスナップの音も好きなんです。「物事が進んでいる」そういう気持ちになります。



マリアンネ・ゴーブル:
「シエナ」はアルテックにとって、大切なテキスタイルデザインです。アルヴァ・アアルトが愛したイタリアの街や建築を手描きで表現したシエナに、今春、新色が加わりました。新色はアルヴァ・アアルトが建築に用いた素材をヒントにした「ブリック / サンド シャドー」、「グレー / ライトグレー シャドー」、「サンド / ホワイト」の3色です。アルテックの日本チームのアイデアで、新色のシエナとポスタルコのスナップパッドのコラボレーションが実現しました。模様がずれたり切れたりすることがないように、スナップパッドに合わせるのが大変だったのではないかと思います。

マイク・エーブルソン:
シエナについて、最初はシンプルなテキスタイルだと感じましたが、ともに時間を過ごしていると、不思議に愛着が沸いてきます。「スナップパッド フォー アルテック」は、それぞれのファブリックのカラーに合わせた中の色の組み合わせを、私のパートナーである友理が考えてくれました。スナップパッドにファブリックを組み合わせるということは新しい試みでしたが、とても良い出来になり満足しています。

マリアンネ・ゴーブル:
アルテックは、アルヴァ・アアルトらがデザインした機能的かつ実用的な家具を現代の暮らしに伝えるとともに、アルテックが大切にしている哲学に敬意を払い継承する現代のデザイナーとともに新製品の開発を行っています。また、他分野において、同じ志をもち、ものづくりへの価値観を共有するブランドや企業との協業にも取り組んでいます。フィンランドのアルテック、東京のポスタルコの国を越えたコラボレーションが、これから先も続いていくことを楽しみにしています。

Photo : Ko Tsuchiya / Postalco / Artek
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